「トロトロっとして、ジュワーとして、柔らかくて、もう歯がなくても大丈夫、甘くてボリュームがあって、でも後味すっきりで最高でーす」
超霜降りの和牛肉をほおばるテレビリポーターのコメントです。
画面では、ほとんどかまずに飲み込んだ後、驚くほど白みがかった物体(霜降りってことですね)をもう一切れ箸で持ち上げ、目の前の炭焼き網に興奮気味に乗せます。リポーターの興奮とは裏腹に「あれ、肉じゃなくで、脂だよなぁ」とテレビに向かって冷めた言葉をなげかける私。リポーターは、白い塊を、ちろっちろっと網の上でひっくり返し、そのまま口へ。「ギャー、せめて、もっと焼いてー」と今度は興奮気味に声を荒げる私。
どうにも脂が苦手です。
最近は、赤味肉やアメリカンスタイルの熟成肉が人気ですが、それでもやっぱりまだまだ脂信仰は残っているように見えます。そもそも脂の逃げ道がない鉄板焼きは好きではないのですが、霜降りなのに、焼くときにオイルやバターを塗ることも、なんだか、信じられません。
「だって、脂って甘いでしょ」と言われます。私は、脂の甘味より、肉の旨みが好きです。
肉に限らず魚でもそうです。トロより赤身、ブリよりヒラメやカレイ、フグなんかもう最高。最近サンマも苦手です。表面に白い脂の層が見え、身の歯ごたえよりドロッと溶けてしまう食感が気になり、どうにも敬遠してしまいます。
魚の脂は体にいいといわれます。ええ、ええ、よくわかるのですが、体にいい悪いではなく、味わいや食感が好きではないのです。
その昔、ワインでおつながりがあった川島なお美さんにも、霜降り肉のステーキを躊躇している私を見て「アラー、友田さん、お肉は太らないわよ~」と魅力的な声で、また驚異的に美しい顔をぐっと近づけて、丁寧に説明してくれました。はい、知っています、なお美さん。しかし、太る太らないではないのです。味わいが苦手なのです。
牛肉ならば赤身でしっとりとした噛み応えがあってギュッと旨みが出てくるようなもの、豚肉や鶏肉なら、どちらかといえばキチキチとした食感で、むしろぱさっとしたくらいの肉が好きなのです。ささみはあまりにもパサついて好きじゃないという方が多いようですが、私はあの、キチキチと歯に吸い付くような食感が、またするめ効果のように噛めば噛むほど旨みや出汁がにじみ出るような、そんな食感と味わいが好きなのです。
だめですかね?