ご存知でしたか?
伊勢海老がなぜ高いのか。
それは、養殖ができないからなのですって。
伊勢海老は大型のエビで、見た目も色鮮やかでゴージャス、冠婚葬祭やお正月には欠かせない縁起物のエビですし、長寿の代名詞として、また鎧を着た武士のように勇ましいと古くから人気がある食材だから高いのか…と思っていました。養殖ができないのは、幼少期が300日と長いうえに食べられるまでにさらに3年もかかるのと、餌の実態がつかめないから。ということはつまり市場に出回るっている伊勢海老は、すべて天然ものだということになるのですねぇ。は~、どうりで高いはずです。
伊勢海老という名前は、伊勢ノ海でたくさん獲れるから、とこれはイメージ通りです。が、生息域は茨城から以南の海ではどこでも見かけることができます。伊勢海老の別名は「鎌倉海老」とも呼ばれるように鎌倉の海でもたくさん獲れますし、千葉房総は「房総海老」と名付けPRをしており、収穫高は三重の抜いて実質日本1位です。そのほか、静岡、和歌山、長崎、宮崎、鹿児島でも獲れます。
伊勢海老の旬は秋から冬にかけて。季語としてももちろん「冬」や「新年」となります。ちなみに5月から8月は産卵期で禁漁なのだそう。5月末の伊勢志摩サミットで提供される伊勢海老は(されるか?されるでしょうね、当然)、禁漁前に収穫したものということになるのでしょうか。
海外、とくに南の島に行くと、大きな伊勢海老をバーべキューや鉄板焼きにしたりします。豪快で豪華なのでテンションがぐぐっと上がりますが、よくよく見るとまた味わってみると日本の伊勢海老とは違うことがわかります。見た目もなにか緑っぽいような青っぽい色をしていて伊勢海老のようないわゆる「エビ茶色」ではないし、味もどことなく大味。伊勢海老っぽいなりをしていますが、実は日本の伊勢海老とは種類が違うのだそうです。
オマールと伊勢海老、何が違う?
また、よく間違われるのがオマール海老(ロブスター)でしょう。
ごく大雑把に違いを言えば、オマールはザリガニ(エビ目・ザリガニ下目・アカザエビ科)で伊勢海老はエビ(エビ目・イセエビ下目・イセエビ科)だということ。
確かにオマールは大きさこそ大きいですがフランス料理や北欧料理でよく食べるザリガニによく似ています。そしてなによりオマールにはハサミがありますが、伊勢海老にはハサミはありません。これは大きな違いです。また、伊勢海老は生で食べますが、オマールは生では食べませんね(果たして食べられるのでしょうか?)。
本当は言いたくない、伊勢海老が最高においしい店
友田史上最高においしい伊勢海老を食べさせてくれる店を紹介しましょう。
残念ながら今回の伊勢志摩サミットが開催される伊勢ではありません。
高知県須崎の港町です。かの明徳義塾高校中学校のある浦ノ内湾、横波黒潮ラインから車が通れるか通れないかの急峻な細い坂道を下っていくと小さな漁港に行きつきます。そこに点在する食堂の一つ「中平食堂」がそれです。伊勢海老のお造りと鍋しかないまさに専門店。
何が驚くって、ほら、伊勢海老って脇腹(というのでしょうか)とか細い手脚(というのでしょうか)やひげの中は身があるのになかなか食べることができない歩留まりの悪い食材です。しかし、この中平さんの伊勢海老は細かいところまでほろほろと身が取れてすべて無駄なく満喫することができるのです。もちろん活きがいいからと大ぶりであるからという理由もありますが、実は秘密の理由があるのです。
それは、伊勢海老漁のプロ中のプロであるご主人は、伊勢海老の血が見えるというのです。
伊勢海老は漁の際網の中で暴れてお互いを棘や角やで傷つけてしまいます。すると人間には見えない無色透明の血が流れるのだとか。ここのご主人はそれを見分け、傷のない、血を流していない伊勢海老だけを振り分けて調理してくれるのです。
信じるも信じないもあなた次第。
しかし、一度このお造りと鍋を食べるとそれが信じられるのです。〆の雑炊をいただくころにはご主人を伊勢海老の神とあがめ、誰もが再来を誓い、必ずお布施をしてしまいます(食事代を支払うってことですが)。
現に日本全国の食通が通う知る人ぞ知る有名店でもあります。ですが気取りのない港町の食堂という雰囲気もまた素晴らしい店です。
極上の伊勢海老を本場伊勢ではなく高知で食すというのも不思議な気がしますが、最高のエビ=伊勢海老は高知にあり!と高知人は自慢します。ただ「伊勢海老」という名前がどうにも許せんきに…とも言っておりました。そう、「土佐海老」では何となくしっくりこないのが不思議ななんともところです。