先日、ミクニ・マルノウチにビジネスランチに行ったら、ソムリエの糀田さんから「東京産の夏みかんをシャンパーニュ割りにしてアペリティフにいかが?」とお薦めいただいた。東京産というところもササったけれど、爽やかでアルコール低めのアペリティフ=食前酒は冬のビジネスランチにピッタリの一杯で、もう感動♪ おかげでその日の食事は美味しく打ち合わせはすこぶるうまくいったのでした。
アペリティフは、今からの食事と時間をググッと盛り上げてくれる大切な前フリです。ここではこのアペリティフの楽しみについてご紹介しましょう。
食前酒=アペリティフ。フランス語でApéritif。もともとはラテン語のAperire=開くという言葉が元といわれており、同じくラテン語のAperitivo=食欲増進の意味も含まれています。今から始まる食事をよりおいしくより楽しくしてくれる飲み物ということです。
お店に予約をして、入店したあと、お店のスタッフに促され席に着きます。そして最初に交わされる言葉は「食前になにか飲まれますか?」です。
ちなみに、アペリティフは絶対に飲まなければいけないものではありません。「いいえ、結構です」と答えてもOK。さらに食前「酒」ですがお酒でなくてもいいのです。お水とかガス入りミネラルウォーターとか、爽やかに柑橘系のジュースとかもアリです。コーラなどの炭酸飲料も決してエレガントではないし大人っぽくもないけれど、まぁアリでしょう。ただ、コーヒーや紅茶はナシです。アイスコーヒーもアイスティーも同様にナシ(注文すれば出してはくれます)。なぜなら、コーヒー紅茶は食後に飲むのにふさわしい飲み物だから。
アペリティフに適した飲みものとは?
食前に飲むとすれば、まずは喉の渇きを潤してくれるもの。爽やかですっきりとして酸味や適度な甘味、心地いい苦みがあるものがいいです。泡があるものも爽やかという点でぴったりです。また食事前なのでアルコールは低めのほうがよりお勧めです。
この条件からすると、ビールはまず食前の代表です。居酒屋でも家でも食事前にはとにかく“とりビー”ですよね。これは実に理にかなっています。昔は格式のあるフランス料理店にビールは置いていませんでしたが、最近はさまざまなタイプのビールを取り揃えています。
そのほか、シャンパーニュをはじめとしたスパークリングワインも定番。爽やかさとともにおしゃれ感もあります。最近では、スパークリング清酒もこのアペリティフに仲間入りしました。ただ、ビールやスパークリングは「乾杯」にも使います。できれば乾杯とは違ったアペリティフを注文する方が楽しみも増えるのではないでしょうか。たとえばアペリティフとしてわざわざ作るカクテル的なもの。
最近は日本各地で採れる国産かんきつ類でつくるスパークリングカクテルが人気です。デコポン、甘夏、ネーブル、イヨカン、ハッサク、日向夏、柚子・・・などなど和テイストで健康的でどこかほっとする味わいで外国人にも人気です。
また大吟醸やスパークリング清酒、濁り酒も素敵な和風アペリティフです。お好みで柑橘ジュースを絞ったり、ソーダで割ったり、氷を入れてオンザロックにしてもおいしいです。
昔から飲まれている梅酒は日本を代表する正真正銘のアペリティフ。しかし、よく温泉旅館に行くと料理とともに小ぶりの酒器に入った梅酒がセッティングされていますが、あれは、ぜひ、やめてもらいたいもの。いくらいい梅酒でも(時に女将の手造り)、食前酒としての梅酒は冷たく爽やかだからこそ感動するもの(お風呂上がりだし)。宿の都合で最初から置きっぱなしはNGです。注ぎたての冷たく爽やかで甘酸っぱい味で提供してこそ、クール・ジャパンなアペリティフになるのです。
ビールのトマトジュース割りも結構おいしいアペリティフです。アルコールが低いのとトマジューの爽やかさがいいし甘くない、なによりヘルシー。お試しあれ。
さらに、アペリティフの目的は止渇や食欲増進だけではありません。今から何を食べようかとメニューを眺めながらあれこれ想像し、スタッフとやりとりしながら、美味しい想像を膨らませる時間、いわば超ポジティブ妄想タイミングなのです。アペリティフは飲み物を飲むという行為たけではなく、この妄想を膨らませる時間を過ごすという食いしん坊にはたまらない意味があるのです。
フレンチやイタリアンは値段も高いが時間もかかると言われますが、こういったアペリティフも含めているからそうなるのです。こういった時間を満喫するからこそのフレンチ、イタリアンです。それがわかってこそ値段に見合った楽しみ方ができるというものです。