最近、居酒屋さんで外国人の姿をよく見かけます。
お手頃価格で、カジュアルな雰囲気で、たくさんの種類の「和食」を楽しめるわけですから、私が外国人なら間違いなく居酒屋に行きた~いと思うはず。様々な文化と伝統が盛り込まれた格式の高い料亭も当然魅力がありますがそう簡単には行けません。
居酒屋さんは「和食」ファンにはつよ~い味方です。居酒屋はあれこれ様々なメニューが用意されていますが、いわゆるコースメニューはありません(飲み放題コースなどはありますが)。居酒屋の料理は、お仕着せのものではなく、今自分が食べたいと思うものを自由に注文することに醍醐味があるのです。
その際、よりおいしく楽しむための順番というものもあります。ルールは簡単。まずは、あっさりしたものから濃厚なものへ、生ものから火を通したものへ、と食べていくこと。そうするほうが味覚生理的にそれぞれがおいしく感じられるからです。揚げ物や濃厚な煮ものの後にあっさりしたおひたしやお刺身を食べては、その味わいがよくわかりません。また、甘いものは最後に持ってきたほうがよりおいしく感じます。
たとえば、こんな順番ではいかがでしょう。
枝豆(とりビーにもぴったり)
本日のお刺身(できれば、白身や貝類を先に、そのあとに光物、そのあとにマグロやカツオなどと進めていきましょう)
おひたしやサラダ類
お豆腐料理
軽めの煮物(たとえば、モツ煮とか肉じゃがなど)
珍味1(じっくり酒を飲みたい人はここで塩辛とか沖漬けとかからすみ、汐ウニ、へしこなどでお酒を楽しみます)
焼き物(イカ(ワタ入りもあり!)、カレイやイワシの一夜干しなど比較的あっさりとしたもの)
焼き物(白身魚の西京焼き、のどぐろなど脂がのったもの)
焼き物(塩系の焼き鳥、焼きトン)
焼き物(タレ系の焼き鳥、焼きトン)
珍味2(ちゃんと食べたい人は、珍味はこのへんで)
煮物(野菜、イカや貝類、カレイなどあっさり系の魚介の煮物)
ポテトサラダ(どんなお酒にも合う万能メニュー、ちょっと中休み)
冷やしトマト(あっさりしているけれど、お口直しになるのでここ)
ヌタや酢の物(季節の魚介に分葱、わかめやキュウリなど。これもお口直しに)
揚げ物(魚、鶏、各種串揚げ。かりっサクッとした歯ごたえもここらへんでほしい)
煮物(キンメ、ブリカマ、豚の角煮など脂ののったもの)
出汁巻き卵(甘いのもおいしい)
鍋物(これは最初からの時もあり。鍋奉行ネタはこちらを見てね)
ご飯もの・麺もの(鍋を使っての双水やうどんもあり)
デザート(旬の果物、アイスクリームなどが多い)
どうでしょう。
好きなメニューが載ってない!と思った方はごめんなさい。何しろ居酒屋はメニューが多いもので。
ま、要は、たとえばこんな順番ということです。あっさり系、生もの系からだんだんと濃い味、火を通したもの、脂っこいもの、甘辛いものに移行しています。この順だと無理なくあれこれ食べられるはずです。
和食、特に懐石料理のメインは煮ものだといわれています。居酒屋では私は焼き物だと思います。もちろんカジュアルに新鮮な魚介を楽しめる「刺身居酒屋」みたいなところもありますが、それはお寿司屋さんのほうがより専門といえそうです。炭火焼の焼き鳥や焼きトン、また串焼き類は居酒屋ならではでしょう(もちろん焼き鳥専門店がありますが焼き鳥はある意味居酒屋の一カテゴリーともいえます)。また、まるまる豪快な魚一尾の煮物、アラの煮物、尾頭のあら焚きなども居酒屋ならではですね。
お酒はどうする?
お酒の種類が豊富なのも居酒屋らしさでしょう。
しかし、そのおかげで最近は、カシスオレンジやサングリアでお刺身を食べる若い人が増えてきたとも言われます。好みといってしまえばそれまでですが、甘いジュースではお刺身の繊細さや深い味わいはかき消されてしまいます。
人気の梅酒やカシス系、フルーティーな甘みのあるワイン系などはのどの渇きを潤す食前酒ですから、最初の一杯にはとてもおすすめ。ただ、一杯で十分。最近の居酒屋さんの一杯は結構量があるので、食前酒系はもっと小ぶりのサイズで提供してほしいと個人的には思っています。
そのほか、定番のビール、もしくはこれまた最近定番ともいえるハイボールを食前酒として1~2杯。そうそう、関東の居酒屋ならばホッピーですね。
その後はお刺身を楽しめる日本酒にいきましょう。この組み合わせこそ居酒屋の本領です。最初は吟醸系や生酒、その後は純米や本醸造をお燗で。おいしいお燗酒を出してくれる居酒屋を選びたいものですね(選ばなければいけないという現実が悲しいですが)。
揚げ物や濃い味になったら焼酎を。オンザロックもいいですし、お燗やお湯割りもいいですね。
このあたりで喉が渇いてきます。居酒屋は基本、お酒を楽しむ場所。料理やおつまみはお酒をおいしくするように塩分の強いものが多いのです。スッキリできるレモンチューハイや抹茶ハイなどが役に立ちます。
焼き物や揚げ物、煮物でワインを入れてもいいですね。こってりとした味わいには赤ワイン、揚げ物にはレモン代わりになる白ワイン。最近の友田流は、脂ののった煮物、焼き物には本格焼酎のストレート。原料風味が楽しめるのとしっかりとしたアルコールが脂分を洗い流してくれます。ご飯ものになったらお酒はストップ。デザートはフレンチやイタリアンと違いあっさりとしたものが多いので口をさっぱりさせて終了となります。
飲みすぎですか?
もちろんご自分の酒量に合わせて調整してください。
チャンポンが心配?
チャンポンが悪酔いの原因ではありません。全体アルコールが許容量を超えないよう適量を楽しめば大丈夫です。お酒を変えると口当たりが変わってたくさん飲んでしまうのでチャンポンがよくないといわれるのです。
居酒屋で楽しむポイントは、おいしい順番を守りながら料理もお酒も適量で、です。
「いや、居酒屋では自分の好きなものを好きなように注文させてくれ」とか「大勢で行くときにはみんなで好きなものをどどーんと注文したい」などもありです。居酒屋の魅力はそこにもあります。また、「その店の名物料理をじっくりとやりたい」などもいいですね。しかし、名物をじっくり楽しめる居酒屋がだんだん少なくなっているのはなんとなく寂しい気がします。