『松阪牛』。
正式な呼び方、わかりますか?
正解は「まつさかうし」。
ちょっと前は「まつざかぎゅう」と呼んでいましたよね。いつからこう呼ばれるようになったのでしょうか。
三重県農水商工部と松阪市松阪牛協議会によれば、生産地域では昔から「まつさかうし」と呼ぶことが多く、三重ブランドとしてこの「まつさかうし」に統一したとのこと。また、登録商標では「まつさかにく」「まつさかうし」としているとのことです。
「まつざか」なのか「まつさか」なのか問題も、平成17年の市町村合併を機に濁らないで発音と決めたそうです。なので『まつさかうし』が正しいとなります。しかし、絶対的なものではなく、いろんな呼び方がなされているのも現状のようです。また生きている牛は「まつさかうし」で肉になったら「まつさかぎゅう」というのは全く根拠がないとのこと。さらに「松坂」ではなく「松阪」が正しい漢字。これは間違わないようにしたいものですね。
ちなみに「松坂牛」の文字で中国人によって商標登録をされたことがあったらしいのですがこれは却下されたそう。さらに台湾では「松阪豚」(とろけるような豚肉)が販売されているのだとか。いやはや「松阪」ブランドは世界で人気なのですねぇ。
ブランド牛、おいしさの基準とは?
松阪牛のほかにも、全国に存在するブランド和牛、何をもってブランドなのか、何をもっておいしいと評価するのか、これが長い間私の疑問でした。よく判断基準となる「A5」「A4」などのランキングは、たしか脂のサシの入り方や色具合を評価したものと聞きます。個人的には脂の多い肉があまり好きではないので、どうも霜降りの肉がいいものだという実感がないのです。現に、最近は赤身肉や熟成肉が人気ですから、同じような好みの人が増えてきたように感じます。
肉は好みだから評価が難しいという人もいますが、ワインはどうでしょう、もちろん好みで選んでいいものではありますが、長い伝統の中で確固たる格付けが確立されています。ゆえに消費者にとっては判断しやすい。そのうえソムリエが分かりやすい香味の説明をしてくれて、それを基に好みのワインを選べるわけです。お肉も何かそういう基準があればいいのになぁと思っていたら、ありました! まるでソムリエのような表現でおいしさ基準を説明しているものが。
“世界のブランド「松阪牛」を育む匠の集団 松阪牛協議会”のHPがそれです。
松阪牛の美味しさ分析として、まず、「牛肉の美味しさは香りが決め手」とあります。輸入牛肉と違い和牛肉には甘くてコクのある特有の香りがありそれを「和牛香」ということ、具体的に桃やココナッツ、その他の果実の香り、脂や樹脂の香気成分など、多様な成分の集合として作られる美味しい香りであることなどが説明されています。なるほどぉ。こういわれると想像しやすいですね。確かにおいしい牛肉はまずもって香りが違います。
また、おいしいと感じさせる「とろけるような」「なめらかな」といった舌触りは、脂肪の質が影響するとのこと。不飽和脂肪酸が多く含まれる松阪牛は、融点が13~17℃と非常に低くそれが口どけの良さにつながっているのだとか。ちなみに、他の和牛は約26℃、交雑種や乳用種は約30℃という結果も表示されています。
外国人もとろけるお肉が大好き?
正直、霜降り肉が好みではない私は、口どけよりも肉としての噛み応えが好きですし、脂の甘味よりアミノ酸の旨味が好みなので、とろけるような舌触りが最高級という判断にはなりません…がそれでもなるほどと納得はします。とくにサミットで来日する首脳陣をはじめとしたグルメな外国人にはこういった肉質は喜ばれると感じます。現に、先日日本酒イベントを開催するために行ったフランス、ブルゴーニュで日本酒とともに提供した和牛がことのほかフランス人に好評でした。フランスが誇るブランド牛シャロレーの故郷に近い場所にもかかわらずです。
さて、サミット晩餐会では間違いなく松阪牛が供されると踏んでいますが、一緒に飲むのはワインか日本酒か? 気になるところです。三重県唯一のワイナリー「スタイル・ワイナリー」の伊賀産赤ワインもいいでしょうし、松阪の清酒「古色蒼然」(新良酒造)なども面白いかもしれません。ああ、提供のお手伝いをしたいものですねぇ。
写真は松阪牛ではありません。