「おもてなし」といえば、東京オリンピックか旅館の女将です。ええ、言い切っちゃってもいいくらい、もてなしのプロといえば、とにかく旅館の女将というイメージが強いものです。
旅館に着いたら、まずは着物を着て三つ指ついて柔らかい笑顔で「いらっしゃいませ」「ようこそ」「お疲れ様でした」と迎えてくれます。
これで、ああ温泉に来たなぁと実感するのです。
ロビーに座れば、夏なら冷たい麦茶、冬なら温かい煎茶、丁寧に点てられたお抹茶を出してくれます。
食事の際には、ご挨拶をしに来てくれ、ときには、ビールや日本酒を注いでくれます。
場合によっては、食事後のカラオケスナック(館内の)までお付き合いしてれることも。
でも、翌朝はきっちりお見送りしてくれ、車が見えなくなるまで手を振り、お辞儀をしてくれます。
女将って大変・・・。
お客から見れば、一見女将は華やかで優雅に見えますが、実のところ、これほど大変な仕事はないでしょう。私にはできないなぁ、うん、尊敬。
そんな大変な女将業ですが、わがふるさと、福井が誇る「あわら温泉」の女将は、さらに大変なハードルを越えました。実は、日本酒提供者にとって必要なプロ資格「日本酒きき酒師」の資格を女将全員が取得したのです。すごいでしょ。
日本酒に詳しい女将は意外に少ないものです(残念ながら)が、ここ芦原(あわら)は女将13名が全員資格を持っており、たとえば、福井の地酒をばっちり取りそろえ、一杯目にはどれがいい、越前ガニにはこれがいい、鍋にはこれ、肉にはこれと教えてくれます。
また、品質管理も行き届き、おいしいお燗を提供しくれます。そのうえ、なんと、女将たちが田植えと稲刈りをし、お酒を造っちゃいました。その名も「純米吟醸 女将」。甘口と辛口があります。これまたすごいでしょ。
お部屋やお風呂がよく、料理がよく、サービスがいいお宿はたくさんありますが、お酒の品ぞろえや品質管理、提供方法がしっかりできるお宿は、実はとっても少ないのです。料理は凝って季節感を取り入れ色とりどりに提供するのに、なぜ、日本酒は年中同じ銘柄で、酒器も変えず、温度にも品質にも無頓着なのでしょうか。これ、とってももったいないことです。
接客の最前線でおもてなしをする女将、ぜひ、お酒のことも勉強してください。私のような地酒ファンのお客様は、間違いなく、女将おすすめのお酒を注文するのですから。
宿泊施設・観光地飲食店様向け、料飲おもてなしサービス研修、やっています。