フランスには村の数と同じだけのチーズがあるといわれています。特にワイン産地ではその土地のワインと合う極上のチーズが長い間変化を遂げ作り続けられてきました。
今回、フェミナリーズ世界ワインコンクールで訪れたブルゴーニュも、チーズファンやグルメが喉を鳴らし、涙を流し喜ぶ、銘醸チーズが数々あります。
「EPOISSES」。
この文字を見るだけでうっとりしてしまうのは、かなりのチーズ通。というもの、このエポワス、匂いがとっても強烈なのです。フランスでは「神の足」といわれていることから想像していただけるかと思いますし、日本のくさやにも似ているかもしれません。想像できますか?
これは、塩水とともにブルゴーニュの地焼酎「マール」を振りかけながら熟成させるため。納豆に似るリネンス菌が繁殖し、匂いが強くなりますが、ねっとりと濃厚な食感と旨味を生み出します。
もとは、シトー会派のあったブルゴーニュ北部エポワス村の修道士が作り始めたものだとか。かの美食家ブリヤ・サヴァラン氏はこのチーズを「チーズの王様」と呼びました。昔は300の造り手がいましたが、最近では激減しているそうです。
今回は、近代的なチーズ工場Fromagerie Gaugry(ゴーグリー)社をお尋ねしました。ワインのメッカ、ボーヌから比較的近く、見学もショッピングも可能。夜にはチーズレストランを楽しめます。
ここで造られるのは、無殺菌乳であることなど条件の厳しいAOP認定のエポワスを主体に、AOPエポワスの条件に満たない「プティ・ゴーグリー」。
シャブリで熟成させた「プレジール・オ・シャブリ」などソフトタイプやウォッシュタイプの熟成チーズをメインに作っており、フランスはもとより日本にも輸入されています。
しかし、ここで購入するエポワスは5€。素敵な価格ですねぇ。
エポワスには、熟成したブルゴーニュワインがぴったりですが、熟成の際に使用するマールを合わせるのはもっとおしゃれ。コニャックやアルマニャックよりもぐっと野趣あふれる味わいで、ブルゴーニュの魅力を十分に感じ取れます。日本でなら本格焼酎。甕寝かせの米焼酎など実においしい組み合わせです。甕からくるミネラルの風味とチーズの熟成風味が不思議と重なり合います。お試しください。