フランス料理の食材には旬がないと思われがちです特に肉料理に関しては、旬はもとより季節感すらまったくないようにいわれます。
が、実はそうでもないのです。
春から初夏にかけて美味しいのが「仔牛」なのです。
冬に生まれた仔牛は寒さの中育つので身が引き締まって弾力があって美味しいと言われています。温かい季節に生まれた肉は逆に締まりがなく心地いい食感がないのだとか。
癖がなく、繊細な肉質を持つ、贅沢な食材の仔牛は、日本ではあまり使用しません(最近はそうでもない)が、フレンチやイタリアンでは高級食材とみなされています。
とくに草を食べる前の「乳飲み仔牛」は最高級です。筋肉が発達してないので非常にやわらかく、脂肪もとても少なくあっさりとして、ほのかにミルクを感じさせるような風味があります。牛の肉ではありますが淡いピンク色で白身に近いお肉です。
仔牛料理の伝統があり世界有数の放牧地帯でもあるブルターニュ産の乳飲み仔牛はグルメ垂涎の的でもあります。BSE問題で輸入禁止でしたが、解禁後、ずいぶんと輸入が増えてきましたし、また日本産仔牛肉も見かけるようになりました。食いしん坊にはうれしいことです。
仔牛肉の代表料理といえば、「ブランケット・ド・ヴォー Blanquette de veau (veau仔牛は)」と「フリカッセ・ド・ヴォー Fricassé de veau」。
「ブランケット」は、肉を出汁や香味野菜とともに煮て、小麦粉や生クリーム、バターで味付けした料理。
「フリカッセ」は焦げ目がつかないように焼いてから、同じように白く仕上げた料理。どちらもクリームシチューやクリームソテーに似ていて、いずれも白く仕上げるのがポイントです。ゆえに、白身の肉(鶏肉もいい)の調理法と言われます。
洗練されたグランメゾンの「ブランケット」「フリカッセ」もありますが、どちらかといえばビストロ料理や家庭料理といえるかもしれません。でも、この「ブランケット」とか「フリカッセ」という響きが、日本人にとっては、もうまさにフランス料理ぃ~~っというイメージですよね。
ちなみに、フレンチでよく見かける「リ・ド・ヴォー ris de veau」は、仔牛の胸腺肉のこと。
ふわっと軟らかくて繊細でミルキーな風味がある食材で「リ・ド・ヴォーのフリカッセ」などは、格式のあるフランス料理店で見かける高級料理といった感じですよね。ですがときに日本の焼肉屋さんでも「シビレ」という名前で出されているようです(厳密に言うとリ・ド・ヴォーとしびれは違うとも)。上質のものは白子のような食感で、まわりをかりっとさせながら調理する「フリカッセ」が人気です。まさに「かりっ、ふわっ」ですね。この「リ」のポイントは仔牛にしかないということ。大人の牛さんにはありません。だからこそ贅沢なのでしょう。
さて、「仔牛のブランケット」「仔牛のフリカッセ」に合わせて注文すべきワインはなんでしょう?
詳しくは追って。
画像は、Comtesse du BarryのHPより。高級食材の販売サイトです。美しい写真がため息ものです。