かの美食家ブリヤ・サヴァランは著書『美味礼賛』のなかで「チーズのないデザートは、片目のない美女と同じである」と言い切りました。食いしん坊ならだれもが知る(大げさかな)格言でもあります。デザートと書かれているのは、チーズはメイン料理の後に食べるものだからこういう書き方になったのでしょう。
フランス人にとって、またフランス料理にとって、チーズは無くてはならないものです。
私が語学研修で行ったロワール、アンジェ大学の学食でも、ランチ時には、簡単な前菜にメインが出て、そのあと少しづつですが必ずチーズが配られました。もちろんテーブルには数種のワインボトルが置かれていました。学食なのに!
またホームステイをしていたエクサン・プロヴァンスの家庭でも夕食時には簡単なフルコース形式で必ずチーズが出されました。ハードタイプあり、ソフトタイプあり、フレッシュタイプありで実に豊かな食卓でした。
もちろんチーズは大好きですし、バラエティ豊富なチーズを体験できるのは本当にうれしいことでした。レストランでも主菜が終わった後にワゴンで運ばれるチーズの山にワクワクしながら、「Un peu de tous(少しづつ全部)」とお願いしたものです。お腹がいっぱいでも絶対チーズが食べたいから「チーズは消化剤」などと都合のいい解釈をして注文したり、甘いデザートをとらないでチーズに専念することも多々ありました。
フレンチを堪能するなら、ここはやはり、チーズ、いっておくべきではないでしょうか。
日本でのチーズの食べ方というと、おつまみとして最初に出てくることが多いかもしれません。昔のビアガーデンやビヤホールでは、クラッカーにチーズを乗せたものがよく出てきました。固いプロセスチーズは、乾き物の仲間のようなイメージだったのかもしれません。
フランスのチーズはナチュラルチーズです。基本の7タイプはこちらを見てね。
とくにフランス料理店で出されるナチュラルチーズは食べごろを見極めた状態のいいものが置かれていますから、違うタイプを3~5種類くらい盛り合わせてもらいましょう。ヤギのチーズ(シェーブル)は初夏が旬ですし、とろりととろけたモンドールは秋が旬です。その時々の旬を食べる楽しみもあります。
また、青かびチーズに蜂蜜やドライフルーツを添えたり、熟成ハードチーズにベリーのジャムをかけたり、脂肪分の高い白カビチーズに完熟リンゴを添えたり、添え物で味に変化や深みをプラスする楽しみもあります。
また、チーズ専用の薄切りパンが出てくることもあります。ナッツやドライフルーツが入ったタイプが多いようです。チーズの味を引き立ててくれます。
チーズの時には、もちろんワインです。
ワインがなければ固めどころか両目のない美女になってしまいます。
メインの時に頼んだワインを引き続き飲んでもいいし(チーズを食べたいからわざと残しておくという人もいる)、あらたにグラスワインを頼んでもいいでしょう。予算と時間が許せばチーズのためにボトルを開けてもいいかもしれません(人数がいればこれもできる!)。
チーズ盛り合わせに合わせるワインは?
チーズと一言でいっても様々なタイプがありますが、合わせるワインも様々です。日本ソムリエ協会の教本には、チーズとワインの組み合わせ例だけで6ページにわたって書かれています。それほど多様な組み合わせがあるということです。
が、レストランではきっといろんなタイプのチーズを少しづつ味比べするでしょう。ならば、おすすめは、ずばり軽めの赤ワイン、もしくはややコクのある白ワインがいいでしょう。
また、思い切ってグルメを気取って、ロックフォールなどの個性派青かびチーズに、グラスの貴腐ワインをお願いするのもいいかもしれません。まさに第3の味が生まれるマリアージュ体験ができるはずです。こんなことできるのレストランならではです。
ぜひ、お試しあれ。