〜友田晶子の“新”ラク学講座〜

日本酒で乾杯!で始まった乾杯条例ブーム

2016.04.15

 

あなたは乾杯するときどんなお酒を使いますか?
ビールですか?
シャンパンですか?
それともハイボール?
日本の宴会やパーティー、食事会での乾杯はやっぱりビールがダントツでしょう。「とりビー」が定着していますからおのずとこれが多くなります。一仕事終えた後のビールを仲間で乾杯するのは本当に気分のいいものです。でもときに、有無を言わさずビールを注文されてしまったり、一応確認したとしても「ビールでいいですか?」と聞かれるのは少々イラッときたりしますが(笑)・・・。だって、最初から日本酒が飲みたいときもありますからね。
しかし、夏の暑いときはもとより、季節を問わず喉が渇いている最初の一杯は、やはり渇きを潤すみずみずしく爽やかな飲み物が理にかなっています。最初の1~2杯の後は、食事とともに、日本酒や焼酎、スティルワインがおいしく感じられます。

ところが最近、「日本酒で乾杯」が全国で叫ばれており、日本酒で乾杯することを法令である「条例」として制定することが増えてきました。乾杯、つまり最初の一口を日本酒にするということです。最近はフルーティで爽やかなタイプやスパークリングも増えましたが、それでも米の旨味がギュッと詰まったトロリとした口当たりや甘味の多いスパークリングが主流です。味覚生理的に言えば、最初の一杯としては少々厳しいものがあります。でも、なぜ、日本酒が最初の一杯となる「乾杯」として推進されるのでしょうか。それも「条例」で。

 

始まりは2004年の「日本酒で乾杯推進会議」

そもそものきっかけは、日本酒造組合中央会が推進役となり、”日本酒で乾杯”をキャッチフレーズに、日本酒を通して日本文化を広く啓発することを目的として2004年6月に発足した「日本酒で乾杯推進会議」でした。ビールやワイン、ウイスキーなどいわゆる洋酒が人気を博すなか、日本の伝統酒である日本酒(焼酎も)が顧みられなくなったことを鑑み、酒席において、もう一度日本人らしさを取り戻そうという意味が込められています。
2013年には「京都市清酒の普及の促進に関する条例」が施行され、いわるゆ「日本酒で乾杯条例」が京都で立ち上がりました。一大日本酒生産地を抱える京都ですし、日本文化の発信地としてはぴったりの場所であり、実にインパクトのある条例でした。
これを機に、全国各地で地元の酒で乾杯する条例が次々と施行されていきます。今では、北海道から鹿児島まで全国約45ほどの市町がなんらかの「乾杯条例」を制定しているようです。地元のメーカーや組合が働きかけて制定されるものもありますが、県民市民町民が自らというよりは、地方議会の議員提案という形で制定されていることが多く、地域ブランド競争や町おこし対策の一環とする自治体側の事情も垣間見えます。また、とくに酒どころでもないのに便乗的なノリで制定するところもあるようです。

「酒は嗜好品、嗜好品を条例とするのはどうなのか」という声があるそうですが、どの条例も乾杯は強制ではなく特に罰があるわけでもありません。好きな人が地元の酒で乾杯すればいいのです。今や「俺の酒が飲めないのか」などと無理やり飲ませようとする人も見かけなくなりました。いや、いたとしてもこれは乾杯条例とは別次元の話です。

私は「地元の酒で乾杯」に賛成です。何かの区切りになる乾杯はどんなときも、集まりの大きさにかかわらず、何となくうれしいもの。また乾杯は神様に感謝、ご先祖様に感謝、一緒にいる人々に感謝の意味もあるでしょう。日本における乾杯なら日本の国のお酒で、がやはりいいように思います。また、「日本酒で乾杯推進会議」の会員にもなっていますし、パーティーでは必ず日本酒で乾杯させていただきます。さらに鹿児島では11月1日の本格焼酎の日に本格焼酎で乾杯します。乾杯したときの結束感(特にその地元にいればなおさら)はたまらないものがあります。

でもでもでも・・・・。
日本酒で、焼酎で、乾杯した後、ちょ、ちょっと一口ビールね、となる人が多いのもまた事実。だってやっぱり喉の渇きを潤せないんだもの。どうしても一杯目はごくごくとのどごしを楽しみたくなります。条例を制定した方でも日本酒の後にビールという人を実は結構みかけます。乾杯の後は好きなお酒をということで、ご愛敬でしょうね。

 

 

 

 

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